あるいは裏切りという名の犬 (2004) <36 Quai Des Orfevres> [film reviews]
この作品、ようやく私の住む地域にもやってきました。よっぽどレディースデー前に行ってしまおうかとも思いましたが、結局、差額500円を惜しみ悶々とした日々をすごすことに。昔なら、駄作さえも観ればパンフをかってたというのに・・・。待ちきれなかったのは、オートゥイユが大好き+近作になかった彼の渋い表情(ポスター)=きっと、ハマる。と信じて疑わなかったから。
パリ警視庁、二人の刑事、レオ(オートゥイユ)とドニ(ドパルデュー)。かつては親友だった二人も、次期長官候補として互いに一歩も譲らない功績をあげていた。彼の信じる正義を貫こうとするレオと、権力にとりつかれたドニ、連続強盗事件ときっかけに互いの運命が大きくかわっていく。
「フィルム・ノワール」の再現ともいえるこの作品、人格的に墜落したドニ=ドパルデューにあっけにとられる。彼の、ずっしりとした存在感を与える立身はもとより、その目にはなにが映っているのか、距離感の計れない思考に、絶えず不安を感じた。レオに対しての情なのか、やはり権力欲なのか。権力に飲まれるドニのように、ドパルデューに魅入ってしまった。
対するレオ=オートゥイユの、ドニを絶対悪として扱わない心情にも敬服した。前にも書いた「彼の信じる正義」がもたらすラストも、悲しみは避けられないと思われたストーリーを、鮮やかに昇華させている。その為の張り巡らされた伏線を追う展開のオープニングに、戸惑いを感じるかもしれないが、ムダは排除されている為ストーリーを追ううちに核心をブレなく観れる。
「ファム・ファタール」はレオの妻となったカミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)と、レオと親交のあったマヌー(ミレーヌ・ドモンジョ)といったところか。ヴァレリア・ゴリノは、『レインマン』は良かったとしても、その後の『ホット・ショット』etcのハリウッドおバカ映画出演はいただけなかった。ヨーロッパ映画が、やはり似合う女優じゃないか。
ハリウッドがリメイクを決めたらしい。幾らオートゥイユとデニーロが似てるからって(私もそう思ってたけれど)、この世界観はハリウッドに持っていけないに決まってる。『インファナル・アフェア』ファンの気持ちが、今、よくわかった気がする。最後に、世にはびこっているチョイ悪オヤジたちに、この作品を観て改心して欲しいと強く思いました。
サントラも良い。もう少し、抑えたBGMが良かったけれど。
- アーティスト: サントラ
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2006/12/06
- メディア: CD
あるいは裏切りという名の犬 DTSスペシャル・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: アスミック
- メディア: DVD
【ドパルデュー編】
- 出版社/メーカー: ビデオメーカー
- 発売日: 1996/05/25
- メディア: ビデオ ドパルデューの鼻が主役
【オートゥイユ編】
【ドパルデュー&オートゥイユ編】
◇監督:オリヴィエ・マルシャル <Olivier Marchal>◇製作総指揮:ユグー・ダルモワ <Hugues Darmois> ◇脚本:オリヴィエ・マルシャル <Olivier Marchal> フランク・マンクーゾ <Frank Mancuso> ジュリアン・ラプノー <Julien Rappeneau> ◇共同脚本:ドミニク・ロワゾー <Dominique Loiseau> ◇編集:ユグー・ダルモワ <Hugues Darmois> ◇音楽:アクセル・ルノワール <Axelle Renoir> エルワン・クルモルヴァン <Erwann Kermorvant> ◇出演:ダニエル・オートゥイユ <Daniel Auteuil> ジェラール・ドパルデュー <Gerard Depardieu> アンドレ・デュソリエ <Andre Dussollier> ヴァレリア・ゴリノ <Valeria Golino> ダニエル・デュバル <Daniel Duval>
こんにちは。
500円の割引は、大きいですよ。私も最近は前売りか、レディースディか、
各映画館のサービスを使って、なるべく安く見ています。
蟻銀さんはたくさんご覧になるから、なおさらですよね。
さて、ほんとうにいい映画でしたね。これがフランス映画だ!みたいな作品というのでしょうか。ハリウッド版は、アイデアだけもらって別物にするのかしらね。そのほうがいいでしょうね。
「橋の上の娘」「隣の女」「メルシー人生」、よかったですね。またフランス映画が来るのが楽しみです。
by coco030705 (2007-02-12 15:55)
はじめまして。思わず書き込みさせていただいています。
この映画、凄く観たかったのに見逃してしまいました。
DVDを期待するのみです・・・
やはり良かったのですね・・・(後悔。)
紹介されている「橋の上の娘」はみています。これ良かった。
これに出てた男優さんだったんですね。
どこが良かったって言われたら、なんとも恐ろしいバシバシとナイフを投げられるバネッサしか思い浮かびませんが・・・愛ってこういう形があってもいいじゃないか的な、大人な世界感がオサレでしたよね。
「チョイ悪オヤジって、ギャクだよね。」と作家のどなたかが対談で言っていました。私もそう思います。
by (2007-02-12 17:01)
はじめまして!
「あるいは裏切りという名の犬」 私も見て良かったので、思わずコメントしました。私もドパルデューのいやらしい演技には魅入らされました。
本作のようなフィルム・ノワールはあまり見たことがなかったのですが、他の作品も見てみたいと思います。
by ramuramu (2007-02-12 18:08)
「あるいは裏切りという名の犬」原題は「36何とかかんとか」ですが、邦題が良いですね。
渋そうな映画なので観に行こうと思って、上映館を調べたら「しまった大阪では明日までだった」。
明日は「孫の日」だからムリなので、二番館に期待します。
by 敏 悌次 (2007-02-12 22:40)
先々週、母を連れてもう一度観てきました。
母も「久々に見応えのあるノワール映画を観たわ」と大絶賛。
>『インファナル・アフェア』ファンの気持ちが、今、よくわかった気がする。
フッフッフッ。分かりましたか。
by (2007-02-13 13:14)
cocoさん、こんにちは~♪nice!をありがとうございます。
フランス映画の底力を魅せつけられたって気がしますね。映画が安ければ、又行きたい作品。昨夜、ずっと躊躇していたオートゥイユの初期作品、「カンニング」シリーズを借りてきました!これをみたからって、キライになるとは思わないんですが、微妙に怖かったりします。
マダムさん、はじめまして♪コメントをありがとうございます!
「橋の上~」も、触れ合わない二人の愛という設定、庶民的な目線の官能が伝わって、ほんと良かったですね。「裏切り~」DVDは私も待ち遠しいです。チョイ悪は、なんか受けつけません。中途半端なんですよね^^;
ramuramuさん、はじめまして♪コメントをありがとうございます!
ドパルデューの肩の力の抜けた正気を失ったような役作り、凄みがありましたね。本当に、芸の幅が広い役者だなって思います。
私も、フィルム・ノワールは開拓途上な分野なんで、これから積極的に観たいです☆
宝塚さん、こんにちは♪nice!をありがとうございます。
「36なんとかかんとか」は、オルフェーヴル河岸36番地という意味らしく、フランス人なら誰もが知っている警察署を指しているらしいですよ。この邦題も良かったですよね、俄然、そそられますもん。私も最近、友達の子供(もうすぐ3歳)と一緒になってジャングルジムに登って遊んでます。けっこう楽しいもんです。
おりょんさん、こんにちは♪nice!をありがとうございます。
ハリウッド版「裏切り~」は、雰囲気が変わるのは当たり前と思って、別の作品を観るつもりで待ちたいと思います。そうじゃないと、楽しめませんもんねぇ。
by クリス (2007-02-13 14:15)
自称「チョイ悪オヤジ」改め、「ちょい真面目オヤジ」の者ですw
同性のいい役者が二人揃う映画は面白いですね。
思い出すところでは、「ラヴェンダーの咲く庭で」や「ウォルター少年と、夏の休日」など、ストーリーの他にも楽しめる作品って、いろんな楽しみがあって得した気分になれます。
by ken (2007-09-22 19:46)
「ちょい真面目」ですか(笑)新婚さんやからかな~?
同姓の良い役者、確かにそうですね。
いちばん好きなコンビは、ジョン・ボイド&ダスティン・ホフマンかなぁ・・・。
「ラベンダー~」はずっと観たかったんで、はやく観たいです。
by クリス (2007-09-23 14:10)