第79回、アカデミー賞を占ってみる！

さて、アカデミー賞のゆくえが気になる季節がやってきました。この時期になると、wowowに入ってたらなぁと毎年のように思います（だったら入れよ（笑））。去年はそれなりに分析した予想にも関わらず、作品賞をハズすという結果になりました。今年はいったい幾つあてられるか? 乞うご期待!?

■作品賞

 やっぱりアカデミー賞はアメリカのものと考えると、『クイーン』が批評家にえらい絶賛されていようと、『硫黄島の戦い』がアカデミー会員の大好きな巨匠イーストウッド作品としても、イギリス、日本を舞台とした二作品は、前哨戦の戦いぶりからみてもノミネート止まりか。『硫黄島～』に至っては、Box Officeも不振らしい＝観ていない会員多し? 続いて『リトル・ミス・サンシャイン』、ほんとうに面白かったけれど、アカデミー賞向きの作品じゃない気がする。監督もノミネートを逃したし、20世紀フォックスが配給しているコメディというと、数年前の『フル・モンティ』を思い出すが、受賞はならなかったし。とすると、本命は『バベル』と『ディパーテッド』。『バベル』は去年の『クラッシュ』のような群像劇という点、芸術性を醸す作風共に本命に値すると思う。『ディパーテッド』は前哨戦の戦いぶりが良い、リメイクということはアメリカ人に浸透していない、そしてBox Officeの成績が良い＝みんな観てる、という三点から受賞の可能性もあるけれど、6回ノミネートしといて一度もあげてないスコセッシが監督賞を獲るなら、作品は『バベル』に。というのも、大本命といえる程の作品がない年は作品と監督が割れる傾向がある為。

 

■監督賞

マーティン・スコセッシ 『ディパーテッド』
スティーヴン・フリアーズ 『クイーン』
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 『バベル』
クリント・イーストウッド 『硫黄島からの手紙』
ポール・グリーングラス 『ユナイテッド93』

上記の通り、監督賞はスコセッシ本命、もしも作品賞が『ディパーテッド』だった場合は、アレハンドロにいく気が。なんにしても上記ニ部門は割れると予想。スコセッシは6回のノミネートを受けながら無冠、というのは、ご存知アル・パチーノと同じ。彼は7度目の正直というか、『セント・オブ・ウーマン』にて念願の受賞を果たす（この時のスタンディングオベーションは鳥肌もの！）。数字の一致という点からスコセッシを押したい。そしてスタンディングとなれば、オスカーも盛り上がりそう。

 

■主演男優賞

フォレスト・ウィテカー 『ラストキング・オブ・スコットランド』
ピーター・オトゥール 『Venus』
ライアン・ゴズリング 『Half Nelson』
ウィル・スミス 『幸せのちから』
レオナルド・ディカプリオ 『ディパーテッド』

ウィテカー強し。最近の流れ＝実在した人物を丹念に演じての受賞、に乗っているし、黒人という昔はハンデにもなりえた要素も、『Ray/レイ』のジェイミー・フォックスの例をみても、最近は気にする必要はなさそう。予告編を観たけれど、凄い迫力だった。彼の弱みといったら、本来は主役級の役者じゃないという点か。ただそれをいったらフォックスだって、『Ray』前はコメディアンとしての知名度のほうがよっぽど高かったし。対抗馬はピーター・オトゥール。『ハスラー2』のポール・ニューマンのような、功労的な受賞は大いにありえるが、ニューマンは7回目のノミネ時に受賞したのに対し、オトゥールは8回目。機を逃したかもしれないが（アルも7回目に受賞↑）。名誉賞を贈ろうとしたら、「現役」な為に断られた過去がある。

 

■主演女優賞

ヘレン・ミレン 『クイーン』
ジュディ・デンチ 『Notes on a Scandal』
メリル・ストリープ 『プラダを着た悪魔』
ケイト・ウィンスレット 『Little Children』
ペネロペ・クルス 『ボンベール＜帰郷＞』

ここは前哨戦、下馬評からみてヘレン・ミレンの独走かもしれない。エリザベス女王によく似ていたし、作品の受賞が薄いとなると、『クイーン』ファンの票はヘレンに確実に流れてくる。アメリカ人がメリルのみということから、彼女に票が集まる可能性もあるが、オスカー向きじゃない作品の弱さからも、対抗馬といえる程の強みもない気がする。ヨーロッパ映画のペネロペは非常に好きだし（『赤いアモーレ』etc）、ケイトもジュディもアカデミー受けする点じゃ引けをとらないが、作品、役柄の強さといった点からヘレン票は揺ぎない。

 

■助演男優賞

エディ・マーフィー 『ドリーム・ガールズ』
アラン・アーキン 『リトル・ミス・サンシャイン』
ジーモン・ハンスゥ 『ブラッド・ダイヤモンド』
ジャッキー・ハール・ヘイリー 『Little Children』
マーク・ウォルバーグ 『ディパーテッド』

毎年のように混沌とするこの部門、エディが一歩リードか？と巷じゃいわれているけれど、正直怪しい。エディ復活といっても、去年のマット・ディロンも似たような状況のもと獲れなかったし、元スパイスガールズのメンバーの妊娠をきっかけに、ついこの間ゴシップを賑わせてたりもしたし、元々はラジー賞に縁のある人。会員はそういうのはお好みじゃない＋『リトル・ミス・サンシャイン』ファンの会員の多くが投票しそうなのがアラン・アーキン。実績も映画界への貢献度もある彼が受賞する可能性は高い気が。近年をみても、モーガン・フリーマン、ジム・ブロードベンド、マイケル・ケイン & ジェームズ・コバーンといぶし銀の活躍が評価される受賞も多い。

 

■助演女優賞

アドリアナ・バラッザ 『バベル』
ケイト・ブランシェット 『あるスキャンダルの覚え書き』
アビゲイル・ブレスリン 『リトル・ミス・サンシャイン』
ジェニファー・ハドソン 『ドリーム・ガールズ』
菊地凛子 『バベル』

日本人感情として、菊池凛子に頑張って欲しい気持ちはある。しかし、最近は特に波乱な展開のないアカデミー、ジェニファー・ハドソンが有力といっていい。助演のエディにう～んと首を傾げてしまった会員は、特にジェニファーには投票するハズ。そして凛子さんにとって痛いのは、同作『バベル』からアドリアナもノミネートされていること。票割れはいたしかたない。前哨戦の圧倒的な強さからみても、ジェニファー程受賞が硬い人はいない気がする。それと共に、凛子さんには受賞ならずとも、ワーストドレッサーに選ばれないドレスを期待したい（過去、それはちょっと・・・と思われる格好がちらほらあった為）。

 

■オリジナル脚本賞

 『バベル』
 『硫黄島からの手紙』
 『リトル・ミス・サンシャイン』
 『バンズ・ラビリンス』
 『クイーン』

ここは作品賞には投票しなかった作品への票が期待される。『バベル』が作品を獲り、『バンズ・ラビリンス』は作品のノミネートがない為、残り三作品の争いか。『硫黄島』、『クイーン』共にアメリカの物語じゃないところが再びマイナスに働き、『リトル・ミス・サンシャイン』が受賞というシナリオになりそう。ストーリーの好感度が、元々高いということもプラス。

 

■脚色賞

 『Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan』
 『トゥモロー・ワールド』
 『ディパーテッド』
 『リトル・チルドレン』
 『あるスキャンダルの覚え書き』

『ディパーテッド』の何処を脚色したのか?という疑問もなきにしもあらず（笑）だが、オリジナルを知らないアメリカ人が多いことから、脚色力というよりも作品力から受賞の可能性は高い。『トゥモロー・ワールド』の映像化された世界観がとても好きだったが、この作品は撮影賞は硬いとしても、脚色には疑問が残る。

 

■編集賞

 『バベル』
 『ブラッド・ダイヤモンド』
 『トゥモロー・ワールド』
 『ディパーテッド』
 『ユナイテッド93』

『バベル』が作品賞獲るなら、勢い余って編集賞も獲りそう。対抗しそうなのは、この部門に強そうな『ユナイテッド93』か。

 

■撮影賞

 『ブラック・ダリア』
 『トゥモロー・ワールド』
 『The Illusionist』
 『パンズ・ラビリンス』
 『イリュージョンVS』

この辺りは、観ていない作品があると予想しきれない。脚色賞にも書いたように、『トゥモロー・ワールド』のカメラワークに新鮮なものを感じた、為、今作を押す。

2007年度アカデミー予想、最後のほうの苦し紛れが気になりますが、以上にて終わります。受賞式は日本時間の2/26 AM:9:30～から、wowowにて観られます。どの映画が受賞するのか、楽しみですね♪

コメント 9

今年こそ生で授賞式を観ようとwowowに加入したのですが
なんとこれが仕事になってしまって、某テレビ局でスタッフと一緒に
朝から見る羽目に（笑）。
アカデミー賞で一番期待するのは、MCの司会振りと受賞者たちのコメント。
…ん？てことは字幕が入ったものを観るのがいいってことじゃないですか。
ま、いいか（笑）。
by ken (2007-02-25 15:36) 

はぁ～
蟻銀さんは私より冷静に分析されていて全て当たりそうな予感。
私なんかほぼ適当ですからね。今年はまったく当たりそうに無さそうです。
それでも、『バベル』絡みで１番獲りそうなのは助演女優のアドリアナ・バラッザではないかと思うし、『ディパー』はもしかすると意外と獲っていくような気もします。助演男優はシャイモン・フンスーって話もちらほら。
ヘレン・ミレン、フォレスト・ウィッテカー、ジェニファー・ハドソン以外はどうにもこうにも解りませんですよ（＾＾；）
by (2007-02-25 21:21) 

僕はノミネート作品をどれも鑑賞していないので蚊帳の外から
見守る所存ですが、菊地凛子さんや日本人俳優さん達が活躍した
「硫黄島」がアカデミーにノミネートされているだけでも誇らしい気持ちです。菊地凛子さんに至っては日本の芸能マスコミも注目してるように
一時的でなく邦画の方も牽引していって欲しいと願います。
by (2007-02-25 21:30) 

こんばんは。
予想がすごく的確な感じがしました。見ていない作品が多いんですが、
アメリカ人が大好きなクリント・イーストウッドとメリル・ストリープにかっさらわれないことを祈るばかりですね～。
菊池凛子さん、とってほしいわ～。彼女のドレスはシャネルが提供するそうですよ。だから、ワーストドレッサーにはならないでしょう。（＾＾）
by coco030705 (2007-02-25 21:59) 

私は明日、仕事を休みます。
ノミネート作品全体で見ると、私はアカデミー賞よりも
インディペンデント・スピリット・アワードの方が好みですが。
今回楽しみにしているのは外国語映画賞かな。
by (2007-02-26 01:23) 

みなさん、nice!にコメントをありがとうございます♪

＞kenさん
アカデミーがらみのシゴトですか～すごいなぁ。生中継をライブでみると、同時通訳のバタバタ振りがちょっと気になりますよねf^-^; とはいえ生の面白さもあるし、字幕でじっくり鑑賞と二度観たくなりますね。

＞トチオさん
本来なら、演技の良かった、作品の良かったものが正当に評価されるべき授賞式となるのが理想なんでしょうけど、やはり多くの人の投票から選ばれる賞なんで、力関係やらなんやらがつきまとっちゃいますよね。そういう面からも予想できちゃう所は残念な気もしますが、特に肩入れする人や作品がないと、第三者的に面白く観れそうな気がします♪

＞kesoさん
ほんとうに、凛子さんや「硫黄島～」が受賞すると嬉しいですね！それ以上の喜びはないと思うんですが、期待しすぎると破れた後のしぼみ様が想像できるんで、第三者的にみたいと思います。こうやって世界的に日本が注目されることは、嬉しいですね。仰るとおり、一時のものじゃなくこれを踏み台にして更なる躍進を狙って欲しいです！

＞cocoさん
凛子さんのドレスみました☆髪型といい、今回はいけてる感じでよかったです。アメリカで開催されるから、アメリカ人贔屓なのはある程度しょうがないかもしれませんが、世界的な賞としてもっと万国に開けた賞になると、映画界にとっても良いんじゃないかなって思います。英語圏じゃない国がどうしても不利になる所も、それを逆手にとって個性が発揮できる活躍が続くと良いなぁって思います。

＞おりょんさん
私も月曜日はヒマな時間はあるんですが、なんせwowowに入ってないんでf^-^; 日本でももっと様々な受賞式が観れると良いですね。ショー化してなくても、世界の映画祭を中継してくれると、映画ファンはもっと楽しいですよねぇ、きっと。
by クリス (2007-02-26 10:30) 

蟻銀さん。鋭い分析ですね。
Alan Arkinの受賞予想。見事でした。
でも、Arkinが受賞してよかったです。まさに「助演」でしたから。
作品賞が「Departed」というのは複雑な気もします…。
by りんこう (2007-02-27 19:49) 

りんこうさん、nice! をありがとうございます。
アーキンが受賞した時点で、予想もパーフェクトかなって思ってたんですが（はや！（笑））「ディパーテッド」はスコセッシにとっても複雑なんじゃないですかね、撮りたくなかった作品が獲っちゃった訳ですから。こんな受賞がこれからも続くと、映画ファンのアカデミー離れがそのうち深刻なものになるかもしれません。
by クリス (2007-03-01 09:48) 

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