監督・ばんざい! (2007) Japan ＜Glory to the Filmmaker!＞

　　　映画上映の前には、その作品の製作会社がスクリーンに映されます。この後に上映される作品の長尺に比べたら、一瞬の輝き。いろんな制作会社の一瞬がある中、私はこのオフィス北野の一瞬が昔からとても気に入ってます。深海のようなキタノブルーの存在感ある浮き上がりと、暖かいけれど心にビリビリとくる音楽がたまらなく好きだと、監督作品を観る度に感じます。

　　　ヤクザ映画はもう撮らないと宣言してしまった世界のキタノは途方に暮れていた。小津風、恋愛、ホラー、忍者物、SF etc... いろんなジャンルの映画を企画するが、どうにもうまくいかない。そんな中、詐欺師の母娘が政財界の大物に接近する－という閃きから滅裂なストーリーが生まれる。（以下、芸人の頃からファンだった、私の視点ヨリ）

　　　松っちゃんの『大日本人』と迷ったけれど、やっぱりこっちを選んだ。カンヌに招待されたりするから、監督の哲学を紐解こうなんて気持ちになって観に行ってる人がチラホラいそうな気がするけれど、もっと身軽になって「隣のバカ」を思い存分楽しみ、笑い飛ばす作品じゃないかと思う。あまりに考えすぎると、監督が意図してなかったことも哲学的にとらえたりして。

　　　オープニングから転がるように展開する駄・企画の駄ぶりといったら、ふざけるもに程がなく（笑）思いっきりの良さが感じられて笑える。映画にする程か?　とう疑問は残るけれど、監督の名前があるからこそ、ここ迄やれたハズ。ジダンの頭突きと時代劇の水着のネエちゃんを、一緒に観られるなんて誰も予測不可能でしたよね。やりたい放題の映画あそびです。

　　　ただ、中盤から失速。詐欺師の変な母娘に話が集中すると、所詮遊びの上に成り立ってたのに急にもっともらしく仕立てられても・・・と乗れない。江本徹は信じられないくらい笑えたし、「壊れています」という台詞が劇中にあって、まんまこの作品のことを指している自虐ネタにくすぐられたけれど、ラストが上手くまとめられてしまったのが残念（というコメントも変?）。

　　　「え?　嘘、終わり?」みたいな人を食った終わり方をしたら、「金返せ!!!」っていう観客が確実にふえる分、妙に気に入る人もきっとふえたんじゃないかな、と思ってしまいました。ここ迄きたら、とことん変なまま突っ走って欲しかったのに。ちなみに、これから観たい過去の北野作品もある中、『ソナチネ』がいちばん好きかな。次はロードムービーの『菊次郎の夏』。

監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 [DVD]

• 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
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◇監督:北野武 ＜Takeshi Kitano＞　◇脚本:北野武 ＜Takeshi Kitano＞　◇撮影:柳島克巳 ＜Katsumi Yanagijima＞　◇美術:磯田典宏 ＜Norihiro Isoda＞　◇編集:北野武 ＜Takeshi Kitano＞　太田義則 ＜Yoshinori Ota＞　◇音楽:池辺晋一郎 ＜Shinichiro Ikebe＞　◇出演:ビートたけし ＜Beat Takeshi＞　江守徹 ＜Toru Emori＞　岸本加代子 ＜Kayoko Kishimoto＞　鈴木杏 ＜An Suzuki＞　吉行和子 ＜Kazuko Yoshiyuki＞　藤田弓子 ＜Yumiko Fujita＞　大杉漣 ＜Ren Osugi＞　寺島進 ＜Susumu Terashima＞　井出らっきょ ＜Rakkyo Ide＞