あるスキャンダルの覚え書き (2006) UK <Notes on a Scandal> [film reviews]
この作品のポスターをみた時、これは観てもハズさないなと直感しました。予告を観てそれが確信に変わった理由をあれこれ考えてみたけれど、これという理由が思い浮かばない。強いていうなら、イギリスっぽい固さを感じたからかもしれません。そして今作は、特に女性にとっては面白く、男性にとっては「女は怖い」と改めて感じさせる一作となっています。B級俳優を使って超B級サスペンス仕立てにすれば、欲望のギトギト感が増したけれど(『ワイルドシングズ』のように)、今作のように、ある一定の上質感を保っているのも悪くない。
ワーキングクラスの子供たちが通うある中学校に、新任の美術教師、シーバ(ケイト)が赴任する。ベテラン教師のバーバラ(ジュディ)は彼女となら親友関係が築けると密かに彼女を観察し、近づくきっかけを探っていた。ある日、男子生徒同士の喧嘩を止められなかったシーバを助けたバーバラは、彼女に感謝され二人の距離は縮まっていくが、偶然、シーバとある男子生徒の情事を目撃してしまう---
『アイリス』を撮った監督の作品だけに、今作も前述したように固さや品が保たれている。扱ってる題材的には、品が良いなんて表現は似つかわしくないけれど、実際そう感じてしまうからしょうがない。40をすぎた美術教師と、15歳になる中学生の情事なんてと嫌悪感を感じる一方、女性なら何処かくすぐられるシチュエーションなのは確かだ。尾崎の「15の夜」は、"夢みてるあの娘の家の横を サヨナラつぶやき走り抜ける" 純情さが残っていたのに、このスキャンダル設定に違和感を感じないのは時代のせいなのか。
しかし今作の本質は"孤独感" 。バーバラのシーバに対する執拗な執着も、教え子に溺れていくシーバも、孤独や満たされない気持ちを持て余してすごしてきた年月がながかった分、独白される彼女達の余りにもざっくばらんな本心にドギマギする。乾ききった独身中年バーバラの、「バスの運転手から両替を受けとる際の、ふと指が触れ合う瞬間」の描写、彼女が書き連ねるシーバに関する病的な日記etc 原作の確かさを上手く生かしきっている(ハズ)と、未読ながらそう感じさせる程、女の隠れた内面を巧みに表現している。ジュディ・デンチのストーカー振りが凄いけれど、彼女の場合、『ヘンダーソン婦人の贈り物』のようなキュートな老女にもなれる幅の広さに、もう感服するしかない。
Notes on a Scandal: What Was She Thinking
- 作者: Zoe Heller
- 出版社/メーカー: Picador USA
- 発売日: 2006/11/14
- メディア: ペーパーバック
◇監督:リチャード・エアー <Richard Eyre> ◇原作:ゾーイ・ヘラー <Zoe Heller> ◇脚本:パトリック・マーバー <Patrick Marber> ◇撮影:クリス・メンゲス <Chris Menges> ◇編集:ジョン・ブルーム <John Bloom> ◇プロダクションデザイン:ティム・ハットリー <Tim Hatley> ◇衣装デザイン:ティム・ハットリー <Tim Hatley> ◇音楽:フィリップ・グラス <Philip Glass> ◇出演:ジュディ・デンチ <Judi Dench> ケイト・ブランシェット <Cate Blanchett> ビル・ナイ <Bill Nighy> アンドリュー・シンプソン <Andrew Simpson> トム・ジョージソン <Tom Georgeson> マイケル・マロニー <Michael Maloney>
この映画の予告を映画館で見ました。
とても、興味深いです。
まだ、映画館でやっていますね。
見て来ようと思います。
by ミック (2007-07-17 00:11)
ミックさんこんばんは。nice!をありがとうございます。
まだこれは上映していますね。時間をみつけて観てきて下さい。女性は必ず?といっていい程楽しめると思います。
by クリス (2007-07-20 23:51)
こんばんは^^
昼メロチックな内容でありながら、
確かに上品さと固さ、感じました!
女優二人の演技力には脱帽です。
by てくてく (2008-08-22 00:13)
てくてくさん、こちらにもお越し頂きありがとうございます。
昼メロっぽかったけれど、主役2人のせいですかね、上質な作品にみえたのは。しかし怖かったですよね・・・。
by クリス (2008-08-24 20:19)