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彼女が消えた浜辺 (2009) Iran <Darbareye Elly> [film reviews]

   『ペルシャ猫を誰も知らない』につづく、ことし2本目のイラン映画。90年代から、良質なイラン映画に出会う機会はあったけれど、年に2本観た記憶がありません。今作が『ペルシャ~』とちがうのは、イランの検問をとおっている作品ということです。よって、子供をつかった間接的批判作品もある中、国家批判的なシーンは一つもありませんが、イラン文化がのぞける1作です。

   テヘランからほど近い、カスピ海沿岸のリゾート地へやってきた、セピデーと3組の家族たち。そこには、セピデーに誘われて参加した1人の若い女性エリがいた。離婚したばかりの友人アーマドに、彼女を紹介しようという思惑が、セピデーにはあった。しかし翌日、子供が溺れたことをきっかけにエリが忽然と姿を消してしまう。必死の捜索が続く中、次第に謎が浮き彫りになる。

   イランといえば、けっこう最近になって姦通罪による石打ちの死刑を言い渡された女性の執行が、延期になりました。この女性、結局は禁固刑になる可能性が高いとのこと。姦通罪が、もしも日本や欧米にあったら・・・年にどれほどの人が社会的罪人になるんでしょうか。イラン、そしてイスラム教国家は、女性の貞節を守ることに掛けては、わたしたちの常識を超えています。

   そんなことをアタマに入れて今作を観ると、エリが姿を消した後に浮き彫りになる謎の1つ1つの重大さが、やけに重く感じるかと思います。女性にベールをかぶせたり、体のラインがみえない服を着せたり、公の場において夫婦じゃない男女が堂々とデートすることも、はばかられる・・・。若いカップルは国境を越えたトルコで、思う存分デートするんだって聞いたことがあります。

   子供が溺れたことをきっかけに、いなくなったエリ。彼女は自ら姿を消したのか、それとも・・・。いなくなってはじめて、エリの本名さえ知らなかった事実をつきつけられた3組の家族は、現実を受け入れられないまま、身勝手になっていきます。そんな彼らを動揺を映すかのような手持ちカメラ。そして、俳優たちの生のリアクションかと思うほどの迫真さに、手に汗、握りました。

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美人のエリ

◇監督:アスガー・ファルハディ 『彼女が消えた浜辺』
◇出演:ゴルシフテ・ファラハニ 『半月~ハーフムーン~』、『ワールド・オブ・ライズ』
     タラネ・アリシュスティ 『彼女が消えた浜辺』
     シャハブ・ホセイニ 『彼女が消えた浜辺』
     メリッラ・ザレイ 『彼女が消えた浜辺』

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