ブラック・ダリア (2006)US/ Germany <The Black Dahlia> [film reviews]
ブライアン・デ・パルマがこの作品を監督すると聞いて、期待は捨てた。彼の映画監督としてのピークはとうに終わっている。興行的にヒットした「ミッション・インポッシブル」(1996)さえ、トム・クルーズの、プロデューサーとしての手腕を評価する声しか聴かれなかった。とはいえ、あの大傑作映画、「L.Aコンフィデンシャル」と共に、エルロイ発「L.A四部作」の一角を担うこの作品、観ない訳にはいかない。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 1999/01/20
- メディア: DVD
1940年代のロサンジェルス、実際の起こった’’ブラック・ダリア’’未解決事件を元に、自身の母も惨殺され、迷宮入り事件となったジェームス・エルロイが書いた原作の映画化。黒づくめのそのスタイルから、’’ブラック・ダリア’’と呼ばれた女優志願女性の惨殺死体。この事件に異常な程執着するL.A.P.Dのリー(アーロン・エッカート)。彼と一緒に暮らし、ある過去に怯えているケイ(スカーレット・ヨハンソン)。相棒として、命の恩人としてリーを慕うが、ケイにも心惹かれていくバッキー(ジョシュ・ハーネット)。ある大富豪の娘、’’ブラック・ダリア’’と瓜二つのマデリン(ヒラリー・スワンク)。それぞれに形を変えて、’’ブラック・ダリア’’に飲み込まれていく---
まず、このジェームス・エルロイという人が書く小説は、難解を極める。「L.A~」(上下)をきちんと理解する為に、幾度となく人物相関図を付けたしつつ読んだ。映画化に際しテイストを凝縮し、キャラクターを絞ったた上に個性を確立させ、ラストにはオリジナルを持ってきた。この大胆な脚本は、オスカーの脚色賞を受賞している。さて「ブラック・ダリア」は。物語の核心を突く迄の幾つかのエピソード挿入が、核心をぼかし、間延びさせた感が否めない。各人物のキャラクターが弱い為、説得力を欠くストーリー展開が続く。
役者陣も、各キャラクターを脚本から掴みきれなかったとしか思えない。エッカートは「サンキュースモーキング」のように伸び伸びとやれていないし、ヨハンソンは飾り物程度の存在感、スワンクは最もミスキャストを感じさせるし(決して彼女がヘタな訳じゃない)、ハーネットは・・・いつもハーネットからは個性が感じられない。デ・パルマは元々、無名だったデ・ニーロやトラボルタ、ミッシェル・ファイファーを使った実績がある。この作品の為に、役者を発掘したほうが良かったかもしれない。そうしたら少しは、各キャラクターがキャラクターとして観れたかもしれない。
監督得意の目線アングルや360度パン、らせん状階段における墜落シーンetc彼のテイストはみられるものの、彼らしい演出は最後迄影をひそめていた。40年代のロスの雰囲気を、たっぷり堪能させてくれた美術と衣装は、素晴らしいシゴトをしたといえる。
少しフォローしておくと、監督が旬の頃には、力作をいくつか残している。
左「LA~」に右「ブラック」。まんまそっくり!
◇監督: ブライアン・デ・パルマ<Braian De Palma> ◇原作: ジェームズ・エルロイ<James Ellroy> ◇脚本: ジョシュ・フリードマン<Josh Friedman> ◇撮影: ヴィルモス・ジグモンド<Vilmos Zsigmond> ◇音楽: マーク・アイシャム<Mark Isham> ◇編集: ビル・パンコウ<Bill Pankow> ◇出演: ジョシュ・ハーネット<Josh Hartnett> アーロン・エッカート<Aaron Eckhart> スカーレット・ヨハンソン<Scarlett Johansson> ヒラリー・スワンク<Hilary Swank>
そうか!「L.A四部作」なのですね。
キム・ベイシンガーにも何かの役でからんで欲しかったデス。
だったら観に行くのですが。(笑)
by 敏 悌次 (2006-10-27 17:46)
はじめまして〜。
役者さんの発掘!同感です。そういった部分でも確かに旬は過ぎている。
分かります。分かります。
by カズ (2006-10-27 23:50)
ですよね、ヒラリー・スワンクはミスキャストでいいんですよね?最も最後まで観てて馴染まないキャストでしたよ。笑
ほんとに無名俳優さんでやった方が、実話を元にっていう作品にリアル感を出せたような気がします。
そういえば、L.Aコンフィデンシャルっていつも途中からしか見れてないんです、これを機会にパクリ探しで観てみようかな。笑
by hanashinobu (2006-10-27 23:51)
おはようございま〜す。おひさ〜です。お元気でしたか?
名古屋の夏も終わり目指すは寒い冬!? (名古屋は寒いのかしら?)笑
ブラックダリア、面白そうですね。だけど、< 説得力を欠くストーリー展開が続く > という蟻銀さんの解説もまた興味をそそられます。実際に起こった未解決事件が根底にあるのなら、やっぱり観たいなぁ〜と思います。
" キャリー " ってそんなに恐い映画なのですか?興味深々。
by berry (2006-10-28 08:03)
ども。この物語を支えるには役者不足だった感じがしますよね。デ・パルマらしさがみえたのは噴水に落ちるシーンのみだったかな。期待していたのに、かなりがっかりでした~。
by (2006-10-29 12:19)
皆さん、nice!にコメント、ありがとうございまーす♪
>宝塚さん
キムは残念ながら不参加でしたね (^-^; 「ザ・センチネル」という今公開中の作品に出演してる模様。観ようかどうしようか迷った末に止めた作品です。
>カズさん
こちらにもお越しいただき、ありがとうございます。役者がヘタに有名どころすぎて、ストーリーよりも際立ってしまった感じですね。
>hanashinobuさん
ええ、スワンクはミスキャストではと・・・。違和感感じまくってましたもんねぇ(彼女に罪はありませんが)。「LA~」はとってもおススめなんで、是非とも観て下さい~。「ブラック~」のダメダメさが浮き立ちます (^-^;;;
>berryさん
今朝は寒かったですよ~。でも、日中は汗をかく程、家の中は暑かったり。南向きの家って、あんまり好きじゃないです。「キャリー」は怖いっていうか、ゾックゾクしますよ。
>katoyasuさん
これ、題材が題材なだけに期待しちゃいますよね。わかります。なんか、こんだけの役者を揃えて、どうして料理できなかったのか、監督の力量不足なのか、よくわかりませんね~。
by クリス (2006-10-31 08:25)
こんにちは。チラシそっくりだなあと思っていたんですよ。見に行こうかどうしようと悩んでいるうちに月日が過ぎそうなので、難解な映画であるならDVDでじっくり見ようかと心積もりをしました。それにしても、チラシ並べてみたらまるで同じですね。
by takepii (2006-11-05 11:58)
takepiiさん、コメント&nice!をありがとうございます♪
こんなに似てるなんて、やりすぎですよねぇ。テイストが似てるとか、リンクがあるとかならわかるのに・・・。これはDVD待ちでもOKだと思いますよ。映画館に行く程の魅力は、残念ながらありませんね~。
by クリス (2006-11-07 14:04)
おはようございます。コメント、TB、nice!どうもありがとうございます。
「LA~」はあれだけ上手く凝縮して映画化できたのに、今回の作品は残念でした。これでエルロイ小説を読む人が少なくなるかと思うと、やや寂しいです(いや、逆に読んでもらえるかも?)。デ・パルマ監督はもうお年でしょうか。。。とりあえずヒラリー・スワンクだけは納得いきませんでした(笑)。
by (2006-11-26 10:46)
takezohさん
こちらにもnice!にコメントありがとうございます。
そうですよね、「LA~」のブライアンに脚本を書かせたら、まだ救われたんじゃないかという気がしちゃいます。エルロイ小説は小難しくて、私も「LA~」以外は読んでませんが、もし機会があったら彼の本を手にとって又読みたいですね。原本のほうが訳本より読みやすいかもしれないし。
ヒラリーは論外ですよね(笑)似てないって、製作者の皆が思っただろうに!
by クリス (2006-11-27 21:52)