サンキュー・スモーキング(2005)US <Thank you for smoking> [film reviews]
Thank You for Smoking
- 作者: Christopher Buckley
- 出版社/メーカー: Random House Inc (P)
- 発売日: 2006/02/14
- メディア: ペーパーバック
情報操作文化がアメリカに浸透しきっていた1994年に出版された原作、と日本語訳。主人公のロビイスト<Lobbyist>(主に企業や利益団体が自身の利益を尊重し、政党議員や閣僚、マスコミや世論に働きかけ、その企業etcに有利な政策を行わせようとする者)が、痛快なディベートテクニックを披露。
タバコ研究アカデミーのロビイスト、ニック(アーロン)は、最も得意とする''トーク''を武器に、嫌煙ムード一色の政治界、世論に対し、マスコミの矢面に立ち続けていた。巨大ドクロマークを、タバコパッケージに載せようと躍起になっている、フィニスター上院議員(メイシー)が目下最大の敵。アイデアに富むニックは、タバコ界の権力者、ザ・キャプテン(ロバート・デュバル)にも気に入られ、タバコPRの為、ハリウッドプロデューサー(ロブ)に、最高にクールな喫煙シーンをメジャー映画に盛り込むよう交渉する。交渉もうまく行き、フェニスターとのディベートにも打ち勝ち、美人記者ヘザー(ケイティ)ともイイ仲になり、上昇一辺倒だった彼の身に、思いもよらぬことが起こり---
コミカルな音楽をバックに、バラエティーに富むシガレッツのカートンパッケージが踊る。よくみるとパッケージには印字されたキャスト&クルーの名前が。オープニングにセンスの良さを感じる作品は、期待を裏切らないことが多い。「キャッチミー・イフユーキャン」や「キスキス・バンバン」は、それを証明する代表作。
ロビイスト・ニックは絶対に嘘はつかない。その代わり、事実を都合良く湾曲に伝える。+意表を突く切り込みに、気がつけば完璧に彼のペース。敵対していたはずなのに、何故か握手してた・・・という展開が絶妙。畳み掛けるように、ある意味 ''へ理屈'' をこねられれば、観ているこっちもウンザリ・・・・・・しない所は、エッカート自身が本来持っていた愛嬌か。
情報操作大国=アメリカという図式は、第三国にいる者がとてもリアルに感じること。9/11以降の対テロ攻撃、イラク戦争、ブッシュの再選etc、操った世論の上に成り立ってきたように思う。日本においても、''上の人たち'' の都合の良い情報を、知らず知らずのうちに私達は刷り込まれていないか。新聞や雑誌、TVから与えられたものを、鵜呑みにした上 ''解ってる'' フリをしてないか。得も知れぬインパクトを与えるマスコミに飲まれる前に、立ち止まってよく考えて、ウラをとったりして、自分なりの思考を持たないといけない・・・と、そんな問題提議もしてくれる。そして、アメリカ人の、ディベート能力の高さも感じられる。「サムサッカー」にしても、子供の頃からあれ程実践的にディベート力を鍛えられてしまうと、暗記物一辺倒の日本の教育を受けた者は、到底敵わない。イギリスにいた間、スマートなディベーターじゃないなと自身を感じたことがよくあった。日本の政治家の人達も、いいように丸められてないといいけれど。
閑話休題。実はこの作品は、題材と反比例するかのようにとても軽いタッチの進行、クスッとさせる小ネタ満載。それに、真の主題は ''父子の絆'' (ニックとその息子)のように感じた。タイトル "Thank you for smorking" は、ニックが父親としてどうあるべきか、という姿勢を、タバコ産業に翻弄されつつ掴みとったからかなと。ストレートに親子愛を謳われるよりも、心にくる。
最後に。ニックの息子役・キャメロン・ブライト君は、二コール・キッドマンの「記憶の棘」(2004)や「Xメン Final」(2005)にも出演。同時期に3作品が日本公開となったが、実際の撮影時期は3年に渡っていて、彼の成長振りをこの一ヶ月程の間に観た感じ・・・。
◇監督: ジェイソン・ライトマン<Jason Reitman> ◇原作:クリストファー・バックリー<Christopher Buckley> ◇脚本: ジェイソン・ライトマン<Jason Reitman> ◇撮影: ジェームズ・ウィテカー<James Whitake> ◇音楽: ロルフ・ケント<Rolfe Kent> ◇編集: デーナ・E・グロバーマン<Dana E. Glauberman> ◇出演: アーロン・エッカート<Aaron Eckhart> マリア・ベロ<Maria Bello> キャメロン・ブライト<Cameron Bright> ロブ・ロウ<Rob Lowe> ケイティー・ホームズ<Katie Holmes> ウィリアム・H・メイシー<William H. Macy> ロバート・デュバル<Robert Duvall>
こんばんは。
確かに、情報操作されてる?と感じて憤りを感じることが最近多いです。
先日観た「父親たちの星条旗」でも、第二次大戦中の情報操作の
実態が描かれていてとても興味深かったです。
「サンキュースモーキング」面白そうですね。
原作があるのは知らなかった。読んでみたくなりました!
by Naka (2006-11-02 00:16)
ご訪問頂きありがとうございましたm(_ _)m
幾つか記事を読ませて頂きました^^
テンプル法曹院(?)の守衛さんが話す事殆ど解らなかったし・・・
イギリス4年も居られ、キングスイングリッシュペラペラで良いですね~!
by モモパパ (2006-11-02 00:23)
Nakaさん、おはようございます。nice!にコメント、ありがとうございまーす。
情報操作が珍しいことじゃないと、完全に暴かれてしまいましたよね。「父親たち~」は昨日観ました。なるほど~そういうことかと、巻き込まれた前途ある青年たちが不憫でした。
私もこの原作、読みたいなぁって思ってます。その前に「冷血」ですね~。
モモパパさん、こちらにもnice!とコメントをありがとうございます。
イギリス英語は聞きやすいと感じますが、彼らのようにペラペラ喋れるかというと、そうでもありません (^-^; 英語はこれからもずーっと勉強し続けないといけないなぁと感じてますよ。
by クリス (2006-11-03 08:27)
おひさしぶりで〜す!お元気ですか?
社会派ではなくコメディーでもない以外とお洒落な映画!?!? . . . のようで、問題提議もあったり。Thank You for Smoking というタイトルが気になるし、真の主題は別なところにあるというところが心憎いし、蟻銀さん、映画への誘惑が上手いですね。(笑)
by berry (2006-11-09 18:29)
berryさん、コメントにnice!をありがとうございます♪
良い映画は皆さんに観て欲しいですし(逆に芳しくないものはおススめしたくないし)、小粒でもキラリと光る佳作が基本的に好きです。この作品は、社会的提議としても親子愛としても観る価値アリですよ☆
by クリス (2006-11-10 23:53)
お久しぶりです。
面白いと、素直に感じる映画でしたが、今一つ心に残る物が無い様に思いました。
後半部分の逆転シーンを深く画いてくれればディベートの面白さが、もっと伝わったのでは?
と思いました。
by カズ (2006-11-15 21:38)
カズさんこんばんは!コメントにすぐ気づかず、すいません、、、m(_ _)m
面白かったのにパンチがなかったですよねー。そういう作風だったのかもしれませんが。逆境に立ってこそのディベートですよね。カズさんの意見は面白いと思います。
nice!をありがとうございました。
by クリス (2006-11-20 17:12)
ども。
蟻銀さん(お名前はなんとお読みしたら良いのでしょう?)て、公開年に関わらず映画を見てらっしゃるんですね。
reviewを見てて、不思議だなと思いました。
さて、この映画、タバコの映画なのに実は喫煙シーン(劇中映画はのぞく)が全然ないんですよね。
たしか、灰皿さえも出てこなかったような気がします。
スタッフはまるで、ニック・ネイラーです。
やられたって感じでした。
それから、蟻銀さんのディペートの話しは、なるほどですね。
ニックがいうように、(情報を鵜呑みにするんじゃなくて)やはり自分の頭で考えなければ、ディペートはまず無理ですね。
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最近、イランが心配なんです。
あの辺りはアラビアンナイトの国々だったのに、いまではあんなに荒廃しちゃって....
by zilwan (2007-01-23 01:45)
zilwanさん、こんばんは。名前はアリギンなんです。読めないですよね~(苦笑)本来なら公開作品をメインに観てたんですが、最近はDVDで昔の良作を観るのも楽しいです、金欠ですしね。
喫煙シーンがないのは、ほんとにやられたーって気がしました。粋でしたよね。時勢をちゃんと解ってるというか。
ディベートに関しては、やっぱり欧米は強いです。頭で考えた上、スピードが求められますしね。
イランはどうなんでしょう。危険な感じがしますが・・・。
nice!をありがとうございました♪
by クリス (2007-01-23 21:04)