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ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~(2009) Japan [film reviews]

   田舎から遊びにきていた父母が、10日間の滞在終えて帰途につきました。いた間、母にはお弁当を作ってもらえて。自分が作るお弁当より100倍は美味しかったなぁ。父はというと、友人に会うと出掛けては、帰りの列車が判らなくなって必ず迷っていました。いちばんひどかったのは、八重洲から家に帰るのに、4時間掛かったこと・・・。ほんとなら、20分なのに!!

   戦後の混乱期の東京。小説家の大谷は才能を評価されていたものの、泥酔、借金、浮気を繰り返し、妻・佐知を困らせていた。ある日、行きつけの飲み屋から金を盗んだ大谷に代わり、佐知が働いて返すことに。気性のいい佐知はたちまち人気者となり、彼女に思いを寄せる者も現れる。そんな状況に大谷は嫉妬を募らせていき、バーの馴染みと姿を消してしまう。

   松たか子は、彼女のコンサートに行くほど好きだったことがあります。もちろん今も好きだし、そんな彼女がとてもいいっていう評判を聞いて、興味が沸きました。ぶっちゃけ、ストーリーは二の次、彼女の姿が観たかった。そして、決して幸せとはいえない佐知像から、とてもみずみずしいものを感じました。ときに微笑む笑顔がまぶしいくらい。あ、これって褒めてますよ。

   佐知の夫・大谷は、自堕落な上に始末の悪い自分なりの哲学を持っていて扱いにくい。小説もたいした頑張りもなしに「才能」が書かせてくれるため、評価が高くなればなるほど疑心暗鬼に陥っていく。細かい描写はなかったけれど、そんな苦悩を彼なりに持っているんだろうと思わせる人物像でした。ひょうひょうと大谷を演じる、浅野忠信も掴みどころがなくていい。

   そんな夫を、陽になり影になり支えていく佐知。自堕落な夫を持つ可哀想な妻・・・のはずが、「みずみずしく」感じるのは何故なのか。それは、自ら大谷と添え遂げるという強い意志を持っていて、決して帰る家がないとか、暮らしが成り立たないとか、そういう理由から別れられずにいるんじゃないんです。自ら選んだ道を歩む彼女は、基本、明るくて前向き。

   何故、大谷なのか? 誰からも慕われる佐知なら、もっといい伴侶がいるのに。その答えは、きっと大谷との出会いにあるんだと思います。あの出会いが、佐知にとっては大谷と添い遂げる「すべて」だったのかなと。そして、やっぱり二人揃うと "夫婦" らしさも感じられる。夫婦って、不思議な運命共同体ですね。二人にしか解からないことも、多いもんな。

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◇監督:根岸吉太郎 『雪に願うこと』、『サイドカーに犬
◇出演:
松たか子 『東京日和』、『メタルマクベス
         
浅野忠信 『落下する夕方』、『eatrip (イートリップ)
         
妻夫木聡 『さよなら、クロ』、『69 sixty nine
         
堤真一 『フライ,ダディ,フライ』、『舞妓 Haaaan!!!
        
広末涼子 『花とアリス』、『ゼロの焦点


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コウスケ

映画化ということで
少し前に「ヴィヨンの妻」読み返したんですけど
ホント最低な夫ですよね(笑)
自分なら知り合いにさえなりたくないですね
読者にはなりたいけど^^

それに引き換え奥さんはポジティブというか何と言うか(笑)
とにかくあの旦那にはもったいない
すごいバランスで成り立ってる夫婦です

というか今フッと思ったけど
あの奥さん像は太宰の願望なんですかね~。
by コウスケ (2009-11-24 03:42) 

クリス

大谷は、太宰そのものだったんじゃないかって気はしましたが、
佐知は太宰の願望だったのかな・・・。
云われると、そんな気がしてきますね。
余りにも理想的な奥さんだったし。

それにしても。松たか子はよかったな~って今思い返しても感じます。
この映画に息吹を吹き込みましたね。
by クリス (2009-11-25 11:29) 

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