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自転車泥棒 (1948) Italy <Bicycle Thieves> [film reviews]

   普遍的な名作。ローマを舞台にした作品ということから、ようやく手をつけました。48年製作といったら、第二次世界大戦後です。敗戦国イタリアの、戦後どん底の暮らしを描く今作は、日本にも通ずるものを感じずにはいられません。アントニオが就いたポスター貼りの職、貼られるのはアメリカはハリウッドの大女優(リタ・ヘイワース?)。戦勝国の、娯楽の宣伝ポスターです。

   無職がつづいたアントニオは、やっと映画ポスター貼りの職を得た。シーツを質に入れ、代わりにシゴトに必要な自転車をとり戻し、息子を乗せて町を走る。しかし、シゴト中のふとした隙に、自転車が盗まれてしまう。自転車なしには働けない彼は、警察へ行くが相手にされず、ようやく犯人にたどり着いたものの、仲間の返り討ちに遭ってしまう。思い余ったアントニオは・・・。

   察するに、きっとアントニオは戦場に赴き、やっとの思いで生還したはず。戦争が終わってほっとしたのもつかの間、次はシゴトがない状態がつづきます。これじゃ、せっかく生きて帰ったのに、ひもじい思いを抱えて生きる毎日は、彼にとっては別の戦いだったと思います。もちろん貧しく飢えていたのは、彼とその家族のみならず、"自転車を泥棒" したオトコと仲間も一緒です。

   それを裏づける描写が、施しをおこなう教会や、家族4人が1部屋に暮らす泥棒の家にありました。ネオリアリズモ(新写実主義)と呼ばれる今作は、素人俳優に主役の父と息子を選び、ほぼ全編をロケ撮影にしてドキュメンタリーなタッチを醸しています。その頃ハリウッドにおいては、プロ俳優によるセット撮影が主流だったことから、作成手法にも反骨精神を感じてしまいます。

   そしてその子役が、素晴らしい。素人らしい自然な表情やうごきの中にも、本作のもの悲しさを感じるシーンがいくつもありました。圧巻は、ラストシーン。子供心に、とても傷ついたことが誰がみても明白です。彼のしぐさ1つ1つに、子供らしさと父をたすけようとする大人なところがみえました。安易なハッピーエンドとしないところもまた、アメリカへの対抗のように感じました。

Bicycle-Thieves-4.jpg
健気な息子に涙

自転車泥棒 [DVD] FRT-160

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  • 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
  • メディア: DVD

◇監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 『終着駅』、『旅路』
◇出演:ランベルト・マジョラーニ 『自転車泥棒』
     エンツォ・スタヨーラ 『白い国境線』
     リアネーラ・カレル 『秘められた好奇心/テーブルの下の誘惑』
     ジーノ・サンタマレンダ 『自転車泥棒』

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コメント 6

perseus

こんばんは。
これは古い映画ですね。
でもこういった古い物ほど、結構見入ってしまうことがあります。
温故知新ってヤツでしょうか^^
by perseus (2010-09-18 01:56) 

クリス

古い映画ってシンプルな作りもあって、観ている者がストレートに受け止める
作品の主張があったりしますよね。今の映画は複雑になりすぎて、テーマが
どっちらけなことも多いし。
nice!をありがとうございます。
by クリス (2010-09-18 13:57) 

toshi

クリスさん
こんばんはー^^
コメントありがとうございました♪
最近は古い映画のリマスターが出ていますね
今日も1本古い映画を借りちゃいました^^
by toshi (2010-09-18 19:29) 

クリス

toshiさん、
こんばんは。
こちらこそ、ありがとうございます。
最近は、ヨーロッパ映画が好みだということを、
再確認している日々です。
by クリス (2010-09-19 23:18) 

ken

エンディングの潔さも印象に残る作品です。
このスパッとした切れ味は、今の映画人に見習って欲しいもんです。
by ken (2010-09-20 03:04) 

クリス

潔いですね。
ちょっとあっけにとられる程、潔かったですが、余韻もその分残りました。
nice!をありがとうございます。
by クリス (2010-09-20 23:21) 

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