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霧の中の風景 (1988) Italy | Greece | France <Topio stin omichli> [film reviews]

   ことし1月1日に、会社の組織改編がありました。それによりメンバーが1人ふえたのですが、その方の歓迎会が一昨日ありました。その方は若い頃は映画青年だったらしく。いちばん好きな映画はテオ・アンゲロプロス監督の『旅芸人の記録』と、マルセル・カルネ監督の『天井桟敷の人々』だとか。2作品とも観ていませんが、テオ・アンゲロプロス監督の今作も、なかなかです。

   ふたりの幼い姉弟、ヴーラとアレクサンドロスは、ある夜、前からの計画どおりに家を捨て、汽車に乗ってドイツにいる父を捜しに出る。母から、父はドイツにいると聞かされていた情報しかなく、父の顔も住まいも知らない旅だった。アテネからドイツに向かう途中にあるいろいろな人との出会いと別れ、希望と失望の中から、姉弟がみたものとは。果たして父とは会えたのか…。

   世の中に、このような美しさが存在したのかと、ハッとさせられました。それはとても残酷だけれど、美しく感じるものです。後ろめたさを感じずにはいられませんが、幼い姉弟のあてのない旅は、その運命が残酷になればなるほど美しさを帯びていくという、側面を持っていました。カメラワークによる映像美もさることながら、姉弟の罪なほどの無垢さも原因の1つでした。

   ワンシーン・ワンカットのカメラの長まわしは、とても叙情的。これほどにカメラが、映像が雄弁だと(『ベニスに死す』のように)言葉がなくとも伝わってくるものが余りにも大きくて、それは抱えきれないほどに深いのです。決して冗長とは感じないところは、巧妙。心身ともに傷ついた姉は、無邪気な弟を連れて何処へいくのか。語ることが陳腐なほどに、魅せる作品でした。

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◇監督:テオ・アンゲロプロス 『旅芸人の記録』、『ユリシーズの瞳』
◇出演:ミカリス・ゼーナ 『霧の中の風景』
     タニア・パライログウ 『霧の中の風景』
     ストラトス・ジョルジョグロウ 『霧の中の風景』

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