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キャプテン・フィリップス (2013) USA <Captain Phillips> [film reviews]

   2009年4月。ケニアへの援助物資を運んでいたアメリカのコンテナ船マースク・アラバマ号は、インド洋航海後、ソマリア沖で海賊に襲撃される。船長フィリップスは、乗っ取られる前にクルーを全員かくまい、彼らを救うために自ら人質となり、海賊たちと共に小さな救命艇に乗り移る。事件の一方を受けたアメリカ政府が海軍特殊部隊を出動させ、フィリップス船長の救出作戦を開始するが…。

   『グリーン・ゾーン』のポール・グリーングラス監督が、実際に起こったソマリア沖の海賊事件を映画化。結末を知っていてなお作り出される、感覚が麻痺するような緊張感にやられました。トム・ハンクスはもとより、海賊に扮する素人俳優たちの迫真の演技、シーン展開、間のとり方、カメラワーク、効果音、全てのアンサンブルが監督が指揮するオーケストラのように、ピタとハマってます。

   海賊のリーダー役を演じたパーカッド・アブディは、デビュー作となった本作で、ことしのアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。一方、トム・ハンクスは主演男優賞のノミネートからは、残念ながら漏れています。トム・ハンクス、いつもは巧すぎる演技が鼻につくタイプですが、今作の彼は演出効果もあり、勇気を奮い、正義を信じて戦う生身の船長をとても自然に演じています。

   細かいやりとりの再現は、リサーチの賜物に他なりません。ポール監督が伝えたいことは事実であって、それ以上でも以下でもない。そのため、下手に感情を盛り上げたりすることなく、作品を観てなにをどう感じたかはすべて観客に委ねています。作り手に狙いがない分、自然と沸き上がる感情に揺さぶられる作品でした。特に、実際のスタッフを使ったラストシーンには震えました。秀作です。

phillips1.jpg

◇監督:ポール・グリーングラス 『ヴァージン・フライト』

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きさ

面白い映画でした。ハラハラさせます。実話だけに後半はちょっと地味になりますが。
前半は海賊たちが憎たらしいのですが、後半は強大な米軍艦に包囲されるので気の毒になってきます。
まあ、公海で海賊行為をするのがいけないのですが、彼らの事情も描かれていますしね。
トム・ハンクスは好演していますが、オーディションで選ばれた海賊たちの演技も良かったです。
by きさ (2014-02-21 05:56) 

クリス

きささん、
そうですね。後半、キャプテンが海賊たちと救命船に乗ってしまってからは少し地味でしたが、それでも緊張感もとぎれることなくフィニッシュでした。海賊達の事情を描いたところに、監督は海賊問題の解決には、根っこの部分を改めないといけない必要性をみせていたと思います。nice!をありがとうございました。
by クリス (2014-02-24 12:32) 

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