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トゥモロー・ワールド(2006) UK/USA <Children of Men> [film reviews]

P.D.ジェイムスのベストセラー、『人類の子供たち』を、「大いなる遺産」、「ハリポタとアズカバンの囚人」のメキシコ人、アルフォンソ・キュアロンが監督。ミステリアスなストーリー展開に、血の通ったキャラクター達が深みを与える良作。

トゥモロー・ワールド

 トゥモロー・ワールド

  • 作者: P.D. ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫 

 

西暦2027年、地球上に子供が誕生しなくなって18年経っていた。セオ(クライヴ・オーウェン)は危ぶまれる人類の未来はもとより、自らの将来にも希望を捨て絶望の中を生きていた。そんなある日、地下組織に拉致されたセオは、20年振りに元妻のジュリアン(ジュリアン・ムーア)と再会し、ある少女の為に力を貸して欲しいと懇願される。そこからセオの未来は、思惑を超え大きく変わっていくことに---

最初の印象は、イギリスの冬の悪天候が、混沌とした日常を描くのにこれほど貢献するとは(笑)廃頽的なロンドン、誰もが知ってるロケーションが破壊され、無秩序状態と化していた様は、ロンドンを知っているだけにショック。「28日後」オープニングの、無人のロンドンセンター街も不気味だったけれど(その後、ロケーションを活かしきれない展開に)、今作はインパクトのあるビジョンにも負けない重みのあるストーリーがうまく融合し、近未来映画における新たな世界観をつくったといえる。

 気になった点は二点。今作が設定された2027年とは21年後ということ。子供が誕生しなくなって18年ということは、今から3年後以降子供が生まれないことになる。原作は1992年の作品の為、この時代設定もアリかなと感じるが、今はもう2006年、もう少し先の未来にした"映画バーション"を製作しても良かったような感も。もう一点は、この「トゥモロー・ワールド」という邦題。韓国や中国さえも、原題の「Children of Men」にならったタイトルを自国語に置換えているのに対し、「トゥモロー・ワールド」の安易な響きに悲しくなる。観客に主題を拡散(撹乱?)させ、観るべき点を失わせてしまいかねない。そのようなタイトルが許されていいのかと。「Children of Men」だからこそ、セオが少女を守り、兵士間を通り抜けるスローモーションに得もいわれぬ思いが込み上げてくるのに。オフィシャルサイトにしても、内容の不充実さにこの映画が年末大作への繋ぎのように扱われている気がして、悲しくなった。イギリスの移民問題etc...こんなに議論の余地のある作品なのに、BBSくらい設定してくれてもいいやん。

キャストが素晴らしいのは説明不要だが、ジュリアン・ムーアが(ネタバレ→「スクリーム」のドリュー状態だったのは意外性充分。とはいえ、私は彼女が好きやから観に行ったのに!

後、マイケル・ケインの変装(じゃないけど)は、今は亡きリチャード・ハリスかと思った。ハリポタの校長先生をやってた時に似てる・・・。ともかく、こんな観応えのある作品が今週末には終わってしまうなんてもったいないと思わせる作品。

◇監督: アルフォンソ・キュアロン<Alfonso Cuarón> ◇原作: P.D.ジェームズ<P.D. James> ◇脚本: アルフォンソ・キュアロン<Alfonso Cuarón> ティモシー・J・セクストン<Timothy J. Sexton>◇撮影: エマニュエル・ルべツキ<Emmanuel Lubezki> ◇音楽: ジョン・タヴナー<John Tavener> ◇編集: アルフォンソ・キュアロン<Alfonso Cuarón> アレックス・ロドリゲス<Alex Rodriguez>◇出演: クライヴ・オーウェン<Clive Owen> ジュリアン・ムーア<Julianne Moore> マイケル・ケイン<Michael Caine> キウェテル・イジョフォー<Chiwetel Ejiofor> ピーター・ミュラン<Peter Mullan> 


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Catcat44

こんばんわ!
良作との評価をして下さる方がいて、良かったです。
なかにはズバッと切り捨てられちゃっているレビューとかあって、いろいろ考えさせられて帰ってきた私としては、いまいち寂しい思いだったので。
邦題と、アクション大作みたいな宣伝は、どうかと思いますね。
たくさんの問題を内包した、内側に問いかけてくるような作品だと、感じましたよ。
TBさせて頂きます。
by Catcat44 (2006-12-11 18:49) 

クリス

LICCAさん、おはようございます。nice!&コメントをありがとうございます♪訳がわからなかったというレビューを幾つか観て、はてなと思ってましたよ、私も!日本の宣伝は、安易すぎて呆れることがありますねぇ。アクションを前面に持ってくればヒットするという裏がみえて、ホントに悲しいです。
そちらにもお邪魔しますね~☆
by クリス (2006-12-12 08:06) 

こんにちは。子供が生まれなくなる世界ということで医学的なSF映画を期待していたんですけど、いい意味で期待を裏切られましたね。今の世界が抱えている問題を強烈に改めて教えられた気がしました。邦題に関してはこの映画に限らず、酷いのがたくさんありますよね~。
by (2006-12-13 17:35) 

berry

こんばんは〜♪
ご無沙汰しちゃってます。
なぜ子供が誕生しなくなったの? . . . うふ、それはやっぱり映画を観なくちゃいけないのよね。ホントにそんなことが起こり得るのでしょうか。非現時的のような、でも現実に起こりそうな。ちょっとマジになってしまいました。(笑)
「トゥモロー・ワールド」このタイトルからはな〜んも映画の姿が見えてきません。
タイトルってわからなくていいいもの?(笑)そんなものなのかなぁ〜。
by berry (2006-12-13 23:54) 

hanashinobu

よかったですよねー。大作でもなく、B級でもなく、なんとなく「中途半端」な位置に置かれちゃってたような気がするんだけど、とても今年の洋画の中では印象深い作品でした。前評判やらも一切情報が無いまま映画館の予告とチラシだけ読んで行った割りに良いものを見つけた感があって満足してます。
by hanashinobu (2006-12-14 11:46) 

クリス

>katoyasu さんお帰りなさい♪nice!にコメントをありがとうございます。
医学的SFにもなり得ますよね。なんの前情報もなく観ましたが、力作だったと思います。醜い邦題について話し始めればそれこそ止まりませんが、作品の冒涜にもなりかねないものについては、怒りが込み上げてきますよー(例えば「ナポレオンダイナマイト」の「バス男」とか)。

>berryさん、お忙しい中nice!とコメントをありがとうございまーす♪
確かに出生率は落ちているし、世界的に環境の悪化が取り立たされていますから、人間が生まれないなんて危機もなくはない気がしますよ。外国映画の場合、日本人にわかり易いタイトルをつけて、良い例と悪い例があります。
ムツカシイんですけどね~。

>hanashinobuさん
nice!にコメントをありがとうございます♪確かに、大作じゃないしB級じゃないし。私もなんの前情報もなく、ジュリアン観たさに行ったら、とんだ拾い物をしたなぁとお得な気分で帰路に着きました。本来なら、こういった作品がもっと取り上げられないといけないのに。話題になる映画ばかり率先して宣伝するのも、いかがなものかなって気がしますよね。
by クリス (2006-12-17 10:06) 

ご無沙汰です。

なるほど、仰るとおり邦題が微妙ですね(笑)
トゥモローなんて最後のシーンにしかかかってませんですものね。
まぁ良くある日本の配給会社の間違った宣伝・配給なのでしょうね(笑)

でも、映画は見応えありました。
私は単純な期待で観に行ったので、映像の迫力に大満足でしたよ。
特に終盤の1カット市街戦なんて映画史に残りそうでしたもの。
by (2006-12-26 00:54) 

クリス

トチオさん、こんにちは。nice!にコメントをありがとうございます♪映画の宣伝も難しいですよね、広めようとする余り知りたくない情報が氾濫していたり(007の場合)、この映画のように邦題はいけてない上に情報は乏しくて観客が入らなかったり。
私も意外性がいっぱいあって大変良かったと思います。
by クリス (2006-12-27 15:02) 

ken

邦題サイアクw
でもクライヴ・オーウェンは良かったですね~。007なんて引き受けなくて大正解。
ジュリアン・ムーアがあんなことになるのもチョー意外で、
これはキャスティングの「勝ち」だったなと思います。
ただ、もう少し脚本はなんとかなっただろー!
by ken (2007-09-09 12:22) 

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