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once ダブリンの街角で (2006) Ireland <once> [film reviews]

   イギリスにいた間、とうとうアイルランドに行かなかったことが悔やまれます。アイルランド横断旅行という野望もあったけれど、ダブリンくらい立ち寄ったら良かった。2007年は『麦の穂をゆらす風』という、アイルランド独立戦争を扱った秀作がありました。今作はその86年後となる今のダブリンの街角を、今のダブリンの若者を映していて、月日の流れを感じます。

   ストリートミュージシャンとして、毎日のようにダブリンの街角に立ち続ける彼。稼げる昼はヒット曲を歌っている彼も、夜になると書きためた自作の歌を魂を込めてシャウトする。その歌声に惹かれたチェコからきた移民、花売りの彼女。彼女がピアノ弾けることを知ると、セッションをしてみようと彼は持ちかける。しだいに、互いの音楽性に共鳴しあう二人だったが。

   ミュージカルや、最新のヒット曲をただBGMとして扱う映画は撮りたくなかったという監督。日々の暮らしから湧き上がってくる挫折や希望といった心情を、思わず口ずさみたくなるメロディに乗せた音楽がこの上なくイイ。誰もが思いあたる想いを恥ずかしがらず、潔く歌い上げる"彼"の歌詞に、普段、詩には余り気をとめない者(私とか)の心にもリフレインする程に響く。

   "彼"が俳優とはとても思えなかった。もしも売れないミュージシャンをつかっていたら、これは大発掘かもしれないと感じてプロフィールをチェックすると、アイルランドの人気バンド、"ザ・フレイムス"のヴォーカルらしい。
実は監督も、かつては"ザ・フレイムス"に在籍していたというし、"彼"と次第に心をかよわす"彼女"も、チェコのシンガーソングライター。やっぱりな。

   彼らが愛情を込めて作った良作。結ばれがたく、しかし離れがたい二人の将来にも好感が持てます。アイルランドは、映画作りに対する積極的なロケ誘致や税制の優遇があり、
実は、スコットランドを舞台にした『ブレイブハート』も、アイルランドにある古城をつかってロケーションをしています。国をあげた映画製作に対する積極的な姿勢に、今後も期待大です。

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◇監督:ジョン・カーニー <John Carney> ◇脚本:ジョン・カーニー <John Carney> ◇撮影:ティム・フレミング <Tim Fleming> ◇プロダクションデザイン:タマラ・コンボイ <Tamara Conboy> ◇衣装デザイン:ティツィアーナ・コルヴィシェリ <Tiziana Corvisieri> ◇編集:ポール・ミュレン <Paul Mullen> ◇出演:グレン・ハンサード <Glen Hansard> マルケタ・イルグロヴァ <Marketa Irglova> ヒュー・ウォルッシュ <Hugh Walsh> ゲリー・ヘンドリック <Gerry Hendrick> アラスタ・フォーリー <Alastair Foley> ゲオフ・ミノゲ <Geoff Minogue> ビル・ホドネット <Bill Hodnett> ダヌシュ・クトレストヴァ <Danuse Ktrestova>


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コメント 8

魚河岸おじさん

ヤッパリ見ればよかったな、コノ作品・・・・
来年もヨロシクお願いします
ヨイお年を!
by 魚河岸おじさん (2007-12-31 22:16) 

クリス

もうやってないのかなぁ?
これはほんとによかったです。ミュージカルって、私は少し苦手なんですが、こういう音楽映画が観たかったよー!って心から思いました。
2008年もよろしくお願いしますね♪
by クリス (2007-12-31 23:10) 

江戸うっどスキー

あけましておめでとうございます。良い年になりますように。
字幕を見て、自然と口ずさんで、我が語学力の不足を嘆きました。それで、泣いた訳ではないのですが、ハートを直撃する歌と慎ましやかなストーリー、良かったです。
by 江戸うっどスキー (2008-01-01 02:54) 

クリス

江戸うっどスキー さん、nice!をありがとうございます。
そして、明けましておめでとうございます!良い映画でしたよね、コレ。歌詞に乗せて伝わる彼の心の叫びが、余りにもストレートでした。
2008年もよろしくお願いします☆
by クリス (2008-01-01 13:51) 

coco030705

こんばんは。
ほんとにいい映画でした。私の2008年の初見を飾るナイス・フィルム!
映画製作に対する国の援助はすばらしいですね。日本はまだまだですよね。文化度がやっぱり低いのかなぁ……。
TBさせていただきま~す☆
by coco030705 (2008-01-07 22:44) 

東京国際映画祭での上映の際に行われたグレン・ハンサード &マルケタ・イルグロヴァのライヴ、行きました。音楽の力強さを感じましたし、また、その音楽をフィルムに収めた監督の技量には驚かされました。
by (2008-01-08 15:53) 

クリス

おりょんさん、こんばんは。
私も東京国際映画祭のときに、この作品は観たかったんですよね。でも、シゴトが多忙すぎて平日の昼間に会社を抜け出せませんでした~。残念。nice!をありがとうございました。
by クリス (2008-01-08 22:22) 

lucksun

アイルランドは映画づくりの環境が整っているんですね。
だから良作が多いのかな。「麦の穂をゆらす風」もよかったですよね。
安易なハッピーエンドに逃げず、
自然な展開を迎えるラストが心に残りました。
by lucksun (2009-11-05 01:02) 

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