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フロスト×ニクソン (2008) <Frost/Nixon> [film reviews]

   この作品は、ある程度事実に基づいた構成となっているし、舞台劇としても有名です。それゆえ、あらすじが解る表記が多々ありますが、ネタばれだ! と感じそうな方は、ご注意ください。

   1974年、ウォーターゲート事件を発端として、任期途中に辞職したリチャード・ニクソン元大統領へのインタビューを敢行し、全米進出の野望を叶えそうとする英国の人気テレビ司会者デビッド・フロスト。ニクソンの高額なギャラにも自腹を切り、3大ネットワークから放映を断られても、彼は決して諦めようとはしない。そして、ついに対決のときがきた。

   『チェ~』のように、説明のないままに核心に突入してしまうんじゃないかと思って、ウォーターゲート事件については観る前に情報を仕入れておきましたが、思ったよりもロン・ハワードは、ちゃんとワールドワイドなオーディエンスを視野に入れて制作していました。

   タイトルにもなっている、フロスト×ニクソンのインタビュー対決に際し、終始フロストを圧倒していたニクソン。しかし結局は、業界人には勝てなかったのかな・・・というのが第一印象でした。
   彼は人生のうちに、政治家として(フロストとの対談は引退後)3度の大きなTV出演を行っています。

   1つめは、「チェッカーズスピーチ」。副大統領候補に選ばれた39歳のニクソンは、当選後に資金の不正融資を支持者に批難されます。しかし、当時普及が進んでいたTVに出演し、感動的な自己弁護スピーチを行い、副大統領辞退さえ迫られていたニクソンを副大統領にとどめるよう、当時の大統領アイゼンハワーに要求する視聴者の連絡が殺到しました。

   2つめは、ジョン・F・ケネディと戦った1960年の最初の大統領選挙。ニクソン敗北の最大の原因は、TV討論だったと。
 服飾コンサルタントが選んだスーツを身に着けメイクアップもしていたケネディは、若く健康的にみえたのに対し、「背景に溶け込むグレーのスーツ(白黒放送だった)に、多くの汗をかいたやつれ顔」というのがニクソンの評判でした。

   そして3つめが、このフロスト×ニクソン。この3つを比較すると、1勝2敗の彼。
   劇中においても、パーティが苦手だと話していたように、元々社交的じゃないニクソンは、「チェッカーズスピーチ」のような一方的な演説(だったと推測)においては強かったけれど、2つめ、3つめのような対談、それも男前が相手となると自身をよくみせようとしすぎて、結局最後は失敗してしまったんじゃないかと思いました。
   もちろん、政治家としての返り咲き、名誉回復へのただならぬ執念が生んだ焦りもあったと思いますが。

frost-nixon.jpg
   

◇監督:ロン・ハワード 『身代金』、『天使と悪魔』
◇出演:フランク・ランジェラ 『スモール・ソルジャーズ』、『スーパーマン リターンズ』
      マイケル・シーン 『オスカー・ワイルド』、『アンダーワールド:ビギンズ』
     ケヴィン・ベーコン 『アポロ13』、『ニューヨーク、アイ ラブ ユー』


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コメント 4

hash

こんばんは。
互いの思惑を賭けた言葉の対決は、法廷劇を見ているようで、面白かったです。
>自身をよくみせようとしすぎて
意外に、人がいいのかもしれませんね。
by hash (2009-04-09 01:34) 

クリス

こんばんは。
そうですね、迫真の心理戦でした。ただ、演劇バージョンのほうが、もっと白熱していた気もします(観ていませんが)。
ニクソン、実はかなりの努力家だったのかもと思いました。
by クリス (2009-04-12 00:16) 

コッスン

こんばんわー、私もマイケル・シーンが思いのほか
良かったと思いましたね。
by コッスン (2009-04-12 19:00) 

クリス

こんばんは。
そうなんですよね。実際、器としての違いとかあったと思うんですが、私は彼(フロスト)の笑みが強烈に印象に残ってます。何故だかさっぱりわかりませんが・・・。nice!をありがとうございます!
by クリス (2009-04-12 23:53) 

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