影なき殺人 (1947) USA <Boomerang!> [film reviews]
エリア・カザンが、『欲望という名の電車』や『波止場』、『エデンの東』を撮って名監督と呼ばれるようになる、もっと前の作品です。はじめて知ったけれど、彼は今のトルコはイスタンブール出身なんですね。ギリシャ人の両親を持つんだとか。オスマン帝国とギリシャが戦ったため、ギリシャ人としてイスタンブールに住みにくくなったことから、家族そろってNYへ移住します。
アメリカはコネチカットのある町。町人の誰からも好かれ、信頼されていた神父が射殺されるという事件が起こった、夜分の犯行だったが複数の目撃証言が得られ、やがてある復員兵が容疑者として浮かび上がる。町の政治にも影響を与えた事件の解決を町人は喜ぶが、事件を扱った検事は、ただ1人彼の無実を信じる。裁判がはじまると、状況証拠をことごとく覆していく。
カザンの作品は、まだ『欲望という名の電車』しか観てないけれど、今も映画史に残るこの名作と比べると、今作は手堅いとはいえ小作の域を超えません。実際にあった事件を基に、ドキュメンタリータッチながらもドラマティックに仕上げるというディレクションは、今の映画製作にも使われている、元祖になるとか。といっても、やっぱり地味な印象は変わらないんですが・・・。
容疑者への疑いを、1つ1つ実演を交えて晴らしていく最後の裁判のシーンは、幾度となく「へ~」とか「は~」とか言いながら観ていました。あんなに鮮やかにネタ明かしをされると、ただの阿呆です(笑)舞台出身者らしく、法廷を1つの舞台としてどう魅せるかということにはやっぱりたけています。赤狩りの一件はあるものの、名監督のシゴトはもっと観たいと思います。
第二次世界大戦が終わって2年後の作品・・・時代を感じます
◇監督:エリア・カザン 『ブルックリン横丁』、『紳士協定』
◇出演:ダナ・アンドリュース 『インディアン渓谷』、『鉄のカーテン』
リー・J・コッブ 『波止場』、『カラマゾフの兄弟』
ジェーン・ワイアット 『硝煙のカンサス』、『カナダ平原』
アーサー・ケネディ 『避暑地の出来事』、『アラビアのロレンス』
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