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愛、アムール (2012) France | Germany | Austria <Amour> [film reviews]

   パリのアパルトマンにて、悠々自適な老後を暮らす音楽家夫婦のジョルジュとアンヌ。しかしある朝、アンヌが突然の発作を起こし、夫婦の穏やかな日々は突然終わる。アンヌは手術の失敗によって半身麻痺が残り、二度と病院に戻りたくないというアンヌの願いを聴き、ジョルジュは自宅介護をはじめる。老老介護は心身ともにジョルジュを蝕んでいくが、アンヌを献身的に支えようと懸命になる。

   観賞後の後味の悪さと、身震いするほどの不気味さを与える作品作りには定評があるミヒャエル・ハネケ監督の最新作。そんな紹介の仕方じゃ、いいのか悪いのか判断がつきにくいですが、今作にて、二作連続してカンヌ映画祭パルムドール受賞という快挙を成し得ました。わたし自身は、『ピアニスト』と『隠された記憶』が特に好きです。『ファニーゲームUSA』は吐きそうでした。ほんとに。

   父と母の介護をするようになった今観たら、全く感想が異なったかもしれません。けれど今作は、夫がする妻の介護ということで、子供がする親の介護とは視点が異なるということが今は身をもって判ります。子供が親を介護するときに重要になるのは「感謝の気持ち」。長生きして欲しいとあれこれ画策したがるものですが、夫から妻となると「愛する人の尊厳を守る」ことが重要になるようです。

   子から親の介護の際も、親の「尊厳」を考えると生かす意味が判らなくなったことが私自身ありました。けれど、胸に顔を寄せれば温かくて、手を握れば力強く握り返してくれる。それだけで子供は、親が居てくれるという安らぎを心から感じられます。少なくとも、わたしはそうでした。いろんな方におせわになって、「尊厳」よりも日々のルーチンが重視されても、生きてることがありがたい。

   もう一つ異なるのは、介護する側の年齢とがんばりの効き具合です。子供が親を看るという介護さえ毎日パワーを使うものですから、夫が妻、またはその逆となれば、負担はもっと大きいでしょう。なにより、夫婦として苦楽をともにし、長年連れ添ってきた者が壊れていくのですから、精神的なダメージは計り知れません。静かな描写の中に、忍び寄るように露見する残酷性が際立つ作品でした。

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◇監督:ミヒャエル・ハネケ 『隠された記憶』

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コメント 2

coco030705

こんにちは。異常な暑さの今夏、お変わりございませんか。

この映画は、おっしゃるとおり夫婦間の介護における難しい心理状態を克明に現実的な場面を色々見せながら、うまく描いていますよね。
妻も壊れていくと同時に、夫も悪夢を見たり、鳩を殺したりなど、精神的に壊れて行っているんですよね。
私は夫婦愛の残酷な一面を描いた秀作だと思いました。ハネケ監督作品、もっと観てみたいです。
by coco030705 (2013-08-15 15:39) 

クリス

ココさん、ほんとうに暑い毎日でしたが、きょうは少し落ち着きました。久しぶりに30度をきったようです。
今作は、正解のみえない、終わりもみえない問題に突如として直面してしまった老夫婦が、彼らなりのこたえを見いだす作品でした。その幕切れには賛否両論あると思いますが、誰も責めることはできませんね。
nice!をありがとうございます。
by クリス (2013-08-24 23:43) 

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